【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 ようやく本題に入り、いたって真面目な空気に変化する。

「さっきの男の件だけど、今は衛兵とブラームが対応してる。僕も少し様子を見に行ったけど、『フレデリカ様と私は真の愛を見つけた』『私たちの邪魔をするな』などと言うばかりで話にならない。相当強い妄想に取りつかれているみたいだ」

 アルフレドとルーナが遅れてやってきたのは、騒ぎのあとに場を収め、繋ぎ、閉会後には加害者の様子も確認してきたからだった。

「彼には婚約者がいたと思いますが……」
「うん。仲も悪くなかったはずだ。でも、完全な政略結婚だったんだ。これは、僕の想像でしかないけど……」

 アルフレドは、自身が立てた仮説を話し出す。

 男の婚約は、年齢が一桁のうちに決まっていた。
 家の利益のための、完全な政略結婚だった。
 家のためと割り切り、婚約者ともそれなりの関係を築いていたが、心のどこかで、自分の意思で相手を選びたいと思っていたのかもしれない。
 ある時、5歳という幼さで婚約相手を決められたフレデリカに話しかけられ、勝手に己の境遇と重ねた。
 そして、フレデリカも強制された婚約に不満がある、真の愛を探している、その相手が自分であるという妄想を肥大化させていき――。
 今日、ついにフレデリカに襲い掛かった。
 望まぬ結婚を強いられるフレデリカを、自分の愛で救うために。


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