【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 アルフレドの話を聞きながら、シュトラウスは己の不甲斐なさにぐっと拳を握った。
 フレデリカが異性に積極的に話しかけるようになったのは、シュトラウスが彼女を追い詰めたからだ。
 シュトラウスがもっとしっかりしていれば。フレデリカに対して早くに素直になっていれば。
 フレデリカが他の男を求めているだなんて思わせないよう、自分たちの仲を確固たるものにしていれば……。
 愛する彼女は、あんな目に遭わなくて済んだのかもしれない。

 自分のせいでフレデリカをずっと傷つけていたこと、恐ろしい目に遭わせたこと。
 後悔が尽きることはない。

「シュトラウス。姉さんとのあいだに、なにがあったのかは知らない。でも、腹を括ったんだよな?」
「はい」
 
 シュトラウスは、しっかりと頷いた。

「なら、これからはお前がしっかり姉さんを守れ。もう二度と、姉さんをあんな目に遭わせるな」
「……誓います。彼女は必ず、このシュトラウス・ストレザンが守ります。もう、一人にはさせません」

 男たちの視線が、まっすぐにぶつかり合う。
 シュトラウスの想いが本物だと、アルフレドにも伝わったのだろう。
 1つため息をつくと、

「……姉さんは今、父上たちと話しているはずだ。それが終わったらお前の離れに行けるよう、使用人に声をかけておく」

 そう言って、少しだけ笑った。

「……ありがとうございます。アルフレド様」
「繰り返すが、絶対に手を出すなよ? 姉さんを怖がらせるようなことをしたら、王子の権力で婚約解消させるからな」
「……肝に銘じておきます」

 シュトラウスにはわかった。この義弟(予定)、本気だ、と。
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