怖い部屋-やってはいけないことリスト-
友だちが沢山できるといいねぇ】


そう書かれた文章の下には古い写真がのりで貼り付けられていた。
○○小学校と書かれた校門の前で、誇らしげに胸を張って立っている小さな女の子。

これが若菜ちゃんだ。
このときにはもちろん血は出ておらず、はにかんだ笑みを浮かべている。

これから6年間通うことになる学校の前で期待に満ち溢れていたはずだ。
体に対して大きすぎるランドセルは希望と期待と夢が膨らんでいる証だ。


【最低最悪だ】


若菜ちゃんの入学式という華々しい日の下に綴られている文字は、とても楽しいものではなかった。
相当に怒りが込められているのか、文字が太く、歪んでいる。


【若菜の入学祝いをしているときに純が帰ってきた。
純だって若菜の入学を喜んでくれると思っていたのに、手土産はなかった。それどころか、おめでとうの言葉すら。

新しいランドセルに新しい教科書と筆記用具を入れて嬉しそうにしている若菜を見て「あぁ、今日が入学式だったんだ」と、まるで気のない様子で言っただけだった。
今日が入学式で、お祝いする日だということは何日も前から純にも伝えていたのに。

それなのに純は「仕事が忙しい」の一点張りで、すぐに自室へこもってしまった。
純が祝ってくれなかったときの若菜の寂しそうな顔!

若菜が純になにをしたというんだろう。なにもしてない。それなのに最近はずっと若菜に対しての態度が冷たい】


若菜ちゃんの母親への不満が、ついに若菜ちゃんへ向けられ始めたのだろうか。
純さんは少しも若菜ちゃんの入学を喜んではいなかったようだ。


【純は二言目には「バイトでもすれば? パートはどう?」と口にするようになった。
ようやく若菜が小学生になって気楽になったと思ったらすぐこれだ。

私に休む時間は少しもないの? 純だって、家のことはなにもしてないじゃないの】
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