怖い部屋-やってはいけないことリスト-
一家の大黒柱として生きている。
それが徐々に辛くなり始めていたのだ。

どれだけ頑張って働いても、そのお金は若菜へと消えていく。
自分の子ではない、姉の子へと。
最初のころはそれも気にならなかった。
若菜は可愛いし、姉は家のことをすべてしてくれているし、不満はなかった。

だけどずっと一緒に暮らしていると、ふと感じることがあった。
若菜へつぎ込むお金があれば、もっと便利なところでひとり暮らしができるのにと。

もちろん、そんな考えはすぐに打ち消してきた。
3人で暮らすことに承諾したのは自分なのだし、両親が亡くなって寂しかったのはみんな同じだ。

それに、この3人暮らしは純に婚約者ができれば解消される約束だった。
そうしないとダラダラと死ぬまでこの暮らしが続くことになるからだ。

姉の良子の方は再婚する気がないらしく、純がいなくなっても頑張って生きていくを決めていた。
それなら……と、思う。
それなら、少しくらい稼いできてもいいじゃない?

月に何十万も稼ぐ必要はない。
でもせめて、若菜の食事代くらいは良子が稼いできてもいいんじゃないか。

その思いは日に日に強くなってきた。
若菜が成長して必要なお金がどんどん増えてきたから、余計にだった。

けれど、そのままなんの変化もないまま、若菜が小学校に入学した。
その頃には純と良子は何度も衝突を繰り返し、その度にうやむやになって話が終わっていた。


「ねぇ、もう1度話し合おうよ」
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