怖い部屋-やってはいけないことリスト-
両手で強く握りしめて良子へ近づいていく。
良子は咄嗟に逃げ出したけれどマットに足を取られて転倒してしまった。
そのときに後方に置いてある姿見に体をぶつけた。


「こないで!」


良子が震えながらこちらを見ている。
目を見開いて、涙をためて叫んでいる。

あれだけ自分のことをバカにしてきていた人間が、自分へ向けて懇願している。
その様子が滑稽だった。


「死ね!!」


純は怒りに任せて包丁を振りかざし、そして良子めがけて振り下ろしたのだ。
そして……包丁の先が、若菜の肉体に突き刺さっていた。

良子が刺される寸前に間に割って入っていたのだ。
若菜から血が流れてようやく純は我に返った。


「若菜、若菜!」


良子が絶叫する。
純はその場に呆然と立ち尽くして、包丁を取り落した。
その光景を。鏡だけが静かにすべて見守っていたのだった。
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