怖い部屋-やってはいけないことリスト-
右手にはフルートが握りしめられていた。


『もう少しで大会だったのに……もう少しで大会だったのに』


男子生徒の霊は何度も同じ言葉を繰り返した。
大会ってなんのことだろう?

亜希が音楽室の中を見回してみると、沢山のトロフィーが飾られていることに気がついた。
この学校の、吹奏楽部が大会で成績を残したものらしい。

ということは、目の前にいる男子生徒も吹奏楽部の生徒だったのかもしれない。
男子生徒は全身から悲しみのオーラを噴出していて、それは亜希と和也の心の中に入り込んでくる。
苦しい、辛い、悲しい。

そんな感情に混ざって憎しみが存在していることに気がついた。


『なにが憎いの?』


亜希からの質問に男子生徒の呟き声が不意に途絶えた。
そしてその目がカッと見開かれる。

その瞬間、亜希の体は少しも自由がきかなくなった。
少年の目にがんじがらめにされて、指先も動かすことができない。


『あいつらだ!!』


少年が誰も居ない空間を指差して叫ぶ。
空気がビリビリと揺さぶられて鼓膜が破れてしまいそうになる。

少年の憎しみの原因がふたりの脳内に強烈に入り込んでくる。
男子生徒はクラスの中ではただ1人の吹奏楽部員だった。

いつも放課後になれば部室へ向かい、他の生徒たちと一緒に練習をするのが、男子生徒は好きだった。


でも、『女にまざってフルート吹いてやんの』
< 50 / 126 >

この作品をシェア

pagetop