怖い部屋-やってはいけないことリスト-
そして限界まで手を伸ばして雨樋に置かれているフルートを手に取ろうとした。
が、次の瞬間。
フルートに指先が届く寸前で少年は体のバランスを崩してしまった。

あっと悲鳴を上げる暇もなく、落下する。
大切なフルートが視界に入って、だけどそれもすぐに消えた。

あとは灰色の学校とガラス窓が見えて、そして、すべてが暗転するだけだった。
すべての映像が一瞬にして亜希と和也に流れ込む。

そして少年の憎しみが死んでもなお続いていることに気がついた。
映像の中で少年が来ていた制服は、亜希たちが今着ているものとは違った。

けれど胸に刺繍されている紋章は同じだったから、随分と昔の出来事に違いない。
それほど長い間、少年は幽霊になってもここにしばりつけられてきたんだろう。

長い期間彷徨えばさまようほど、霊魂は凶悪になっていくことがある。
とくにそこに憎しみがあれば、余計だった。
少年の場合もそうだった。


『フルートを返せ! 僕のフルートを返せ!』


さっきまでおとなしかった少年が机をなぎ倒し、椅子を壁にぶつけて怒りを顕にする。
ふたりは身をかがめて少年の攻撃を交わした。


『フルートは今手に持ってるでしょう!?』


亜希が叫んでも少年は聞く耳を持たなかった。
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