怖い部屋-やってはいけないことリスト-
このまま逃げ続けるのは難しそうだ。
包丁は完全にふたりを狙っているし、スピードが早すぎる!


「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」


亜希が指で印を結んで早口にお経を唱える。
それに驚いたように包丁の動きが止まった。
今だ!!

和也はすかさず御札を取り出して、壁に突き立ったままの包丁に貼り付けた。
包丁は完全に動きを止めると、壁から落下してカランッと音を立てた。


「……ひとまず、大丈夫そうだね」


印を解いてホッとため息を吐き出す亜希。
その額には汗が滲んでいた。
心を込めてお経を唱える行為は、かなり体力を消耗するのだ。


「これは危ないから、床下に入れておこう」


和也は御札のついた包丁を取り上げると、キッチン下の収納を開けた。
そこは半畳くらいのスペースがあり、お米などが入れられている。

中にある保存食を取り出して包丁を入れた。
蓋をしめたあと、上から更に御札を貼り付けておいた。

これでしばらくは大人しくなるはずだ。
すっかり疲れ切ったふたりはソファにぐったりと座り込んだ。
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