幼なじみと恋をするには

 翌朝。

 今日も一緒にマンションを出ると、いつもと同じように学校への道のりを二人で歩く。


「今日、好きな小説の新刊出るから、放課後本屋さん寄ってもいい?」


「俺もちょうど星空ナビの最新号出るから、本屋行きたい」


「おけ」


 普段となんら変わりのない会話である。


 昨晩寝付く前に、明日からは柊と恋人同士か、などと考えてしまって朝方まで寝付けなかった私と違って、柊はいつもと全く変わらない。


 え?告白してきたんだよな?この男。何故にそのように冷静でいられるのか。


 柊はもともとクールというか口数は多くなく、どちらかと言うとオタク気質だ。まぁまぁかっこいいからモテないことはないと思うのだけど、浮いた話は聞いたことがないので、男好きか、星にしか興味のない、天文オタクなのだと思っていた。


 付き合い始めて一日目だと言うのに、あまりにも彼氏彼女感がない。もしかして昨日のことは白昼夢だったのだろうか。


 今朝は手も繋いでいない。昨日の帰りに手を繋いで帰ったのは、なんだったのだろうか。しかしまぁ、柊と手を繋ぐことなんて、別に特別なことでもないし、今更ドキドキしたりもしない。小さい頃は散々手を繋いでいたわけだし。


 隣をすまし顔で歩く幼なじみ、いや彼氏(仮)を窺いながら、特に普段と変わりなく学校へと到着してしまった。


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