閉店してからやって来る、お菓子の好きな騎士さんは
05.
で。
まあ、そんな関係になった後でも、閉店後のお菓子タイムは変わらず続いていたんですね。
当たり前ですけど、一緒にいられる時間をわざわざなくすような意味はありませんから。
ただ、彼と付き合うようになって、一つだけ予想しなかった、想定外のことがありまして。
想定外というか、私の認識違いというか。
いえ、別に全然大したことでもないのですが……ええ。
「すまないが、来週の週末は俺の分だけじゃなくて、1ホール分取り置きしておいてくれないか」
その日、彼は今日の分のケーキを食べ終わった後、私に向かって言いました。
「種類は何でもいい。もちろんその分の代金は払う。
……実は、君のことを仲間の同僚たちに紹介することになってしまってね……。
隠すつもりもなかったんだが、昨日皆と話をしている時に、うっかり口を滑らせてしまったんだ」
ちょっとだけ目線をそらし、気恥ずかしげに首もとに手をやる彼に、思わず私の頬は緩んでしまいます。
「わかりました。今の季節だったらベリーがおいしいので、ベリータルトを用意しておきますね」
「ありがとう、助かるよ」
「でも、いいんですか? 職場の皆さんにあなたがお菓子好きってこと、知られてしまっても」
そう口に出してから、もしかして全部バレちゃってるような間柄なのかな、と私は思いました。すると、
「……何言ってるんだ? 別にそんなこと、困るようなことでもないだろう」
きょとんとした顔で、彼は聞き返します。
「え?」
「俺が菓子を好きで何をとがめられるわけでもなし。君の言ってることがよくわからないんだが……」