閉店してからやって来る、お菓子の好きな騎士さんは
でも、恥ずかしいのは私の方です。
甘いもの好きだと知られたくないなんて、ちょっと抜けてて可愛い人だなあ。
心のどこかでそう思ってた私こそ、間抜けな女だったということなんですから。
ほとんど同じタイミングで、長く大きなため息を吐く私たち。
少しだけ早く彼が顔を上げると、切り替え早く優しい笑顔を作って言いました。
「まあ、でもそのおかげで君との時間を過ごすことができたし、こうやって付き合えるようにもなったんだ。思い違いも……悪いことばかりじゃないのかもしれないな」
「そう……ですね」
お互い目が合うと、同時にふふっと笑みがこぼれます。
「でも、同僚の皆さんにはこの勘違い、言わないでおいて下さいね」
「もちろんだ。君も、俺が君目当てでここに通ってたってこと、誰にも言わないでくれよ」
無論、言いませんけど。
けどそれって、普通は私に対して一番知られたくないことなのでは……?
誰もいないのに小声で話す彼を見て、やっぱり可愛い人だというのは合ってるのかもしれないと。
私は声には出さず、そんなことを思ってしまうのでした。
<おわり>