幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
俺の母親は男がいないと生きていけない女だった。父親は知らない。
新しく男を作ったと思ったら別れて、荒れて俺に当たって、また新しい男ができたと思ったら家に帰らなくなる。その繰り返しだった。
「お前なんか産まなきゃよかった」
面と向かって何度言われたことか。
実の母に愛されなかった俺は、自分自身に価値も生きる意味も見出せなかった。
そんな俺に手を差し伸べてくれたのが、桜花組の組長だった。
「行くところがないなら、うちに来い」
どーせクソみたいな人生、極道に身を堕とすくらいでちょうどいいと思った。
しかし、連れて来られた場所は信じられないくらいに明るくて温かい場所だった。
「この子の兄貴になってやってくれないか」
そう言って紹介されたのが、お嬢だった。
「悠生も今日から家族だね!桜花組は、みーんな家族なの!」
無邪気に笑うお嬢があまりにも眩しかった。
いつ死んでもいいと思っていた俺を、お嬢と桜花組が変えた。
こんな俺でも家族と受け入れてくれた人たちに、恩返しがしたい。お嬢の笑顔を守りたい。
それが俺の生きる意味だった。
「悠生〜!!また那桜に負けた〜!!」
お嬢の口から度々出る「那桜」という名前。
桜花組の天敵である染井一家の跡取りだと、組のみんなに聞かされていた。お嬢にとっても天敵であり、ライバルだった。