幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
染井那桜は俺より年下のくせに、やけに大人びて見えた。極道のくせに敬語を使うのが胡散臭い。
いつも余裕ぶって、ムキになるお嬢をからかっていた。
でも、お嬢を見つめる視線が敵対する家の娘を見るものではないと、早々に気づいた。
あいつは時折俺に対し、激しい程の敵意を向けてくる。それもお嬢と一緒にいる時に限って、必ず。
お嬢は全く気づいていないけど、奴がお嬢に対して並々ならぬ感情を抱いているのは明らかだった。
お嬢にとって俺は家族の一人でしかないことはわかってる。
いつか相応しい相手と恋をして、嫁いでいくんだってことも覚悟してる。
だけど、その相手はテメェじゃねぇだろ。
桜花の敵である染井の息子が、お嬢を幸せにできるとは思えねぇ。
テメェにお嬢が本気で守れるのかよ?
「……お嬢は渡さねぇ」
俺は決めたんだ。自分の全てを懸けてお嬢を守ると。どうしようもなかった俺を救ってくれたお嬢のために、命を懸けると。
「ウオオオオオ!!」
俺は全力を右手一本に込めて、その拳を振り上げた。目の前の男を倒すために。