幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
那桜の側近・大山さんが私たちの姿を見て驚愕する。
「若!!何故桜花の娘と一緒にいるんですか!?」
「え、ウチで修行を」
「桜花で修行!?」
あれ、もしかして那桜、ウチで見習いやってたこと言ってない……?
「何だか事情がわかりませんが、ひとまず若を連れて来てくださったことに礼は言いましょう」
私から那桜を引き取った大山さんは、言葉とは裏腹に視線はとても冷たかった。
「あとはこちらに任せて、あなたはお引き取りください」
「あ、はい……」
「迎えが必要なら車を出しますが」
「大丈夫です。組の者を待たせてますから」
「そうですか。ではお気をつけて」
まるでピシャッとシャッターを下ろされたような、そんな感覚だった。
いやでも、あの人の反応が普通なんだよね。
桜花と染井は敵同士なんだから。
「那桜、お大事にね……」
とにかく今は那桜の無事を祈りながら、私も車へと戻って行った。
私はまだ気づいていなかった。
これが本当の波乱の序章に過ぎなかったこと。
私たちの恋が、二つの組を巻き込んだ大波乱を巻き起こすことになるなんて――。