幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
11.絶対に諦めない side.那桜
俺がずっと欲しいものは、ずっと変わらない。
鏡花ただ一人だった。
「なおちゃんってゆうの?わたし、よしのきょうか!いっしょにあそぼう!」
鏡花と初めて会ったのは5歳、幼稚園に入った時だった。
初めて会った時から笑顔がかわいくて、陽だまりみたいな彼女に惹かれた。
敵対する家の子だとか思っていなかった俺たちは、八重も含めてよく三人で遊んだ。
「たんざくのおねがいかいたー?きょうかはね、『なんでもいちばんになる』!」
「わたくしは、『がいこくにいってみたい』ですわ」
「なおちゃんは?」
「ぼくはひみつ」
「えー!?なんでー?」
「なおさんだけずるいですわ」
「ないしょだよ」
幼稚園の七夕で書いた短冊には「きょうかちゃんとけっこんする」と書いて飾った。「したい」じゃなくて「する」なのが、決意表明でもあった。
でも、その短冊を見た両親に烈火の如く怒られた。
「桜花組の娘なんかと仲良くするな」
「染井一家の跡取りらしくあれ」
幼かった俺は、どうしてダメなのか理解できなかった。
「二度とあの娘には近づくな」
ただ鏡花が好きで、一緒にいたいだけだったのに。
ダメと言われたら、どうしても欲しくなる。
鏡花を諦めるつもりは毛頭なかった。
諦めるくらいなら、変えてやろうと思った。
鏡花と一緒にいるためなら、俺は――……
* * *
「……か、若っ!」