幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 それでもこの勝負にだけは負けたくなかった。
 あいつが鏡花をどう思っているか、透けて見えていたからこそ尚更。


「……鏡花、会いたい」

『えっ!?』

「キスしにきてよ」

『なっ何言ってんの!?』


 真っ赤になって慌ててる様子を想像するだけで、かわいくてにやけてくる。


『熱でおかしくなっちゃった?』

「そうかもしれませんね」

『ちゃんと安静にするんだよ!しっかり寝て!』

「はいはい」

『そろそろ切るからねっ。お大事にね』

「はい、寝ます」


 しつこく「安静にして」を繰り返した後、電話は切れた。
 鏡花の声が聞けて心なしか気分が良くなった気がする。それと同時、睡魔に襲われた。
 恐らく薬が効いてきたということなのだろう。俺はそのまま意識を手放した。


* * *


 目が覚めた頃には、外は真っ暗になっていた。
 起き上がると、だいぶ体が楽になっている。熱を測ってみたら平熱まで下がっていた。


「シャワーでも浴びるか」


 寝汗をかいて気持ち悪い。起き上がって自室のシャワールームに行こうとしたら、トントンと窓を叩く音がした。


「えっ……」

『那桜ー!開けて!』


 なんで鏡花が!?


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