幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 流石の俺も慌てて窓を開け、気づかれないように鏡花を部屋の中に入れる。


「なんでここに?」

「会いたいって言ったの那桜じゃん!」

「いや、そうなんですけど……」


 まさか本当に来てくれるとは思わなかった。


「よくここがわかりましたね」

「八重に聞いたの。那桜の部屋の場所とか忍び込むルートまで詳しく教えてくれた」

「そうですか……」


 確かに八重は何度か家に来たことあるけど、いつの間に忍者みたいなことを……。
 ああ見えて八重は悪戯心満載だからな。


「ちょっと汗かいたんでシャワー浴びてきます。テキトーにくつろいでください」

「部屋にシャワーあるってホテルかよ」

「トイレもありますよ」

「ホテルじゃん」


 そんなことを言いつつシャワールームに入ったが、内心はだいぶ動揺していた。汗とともに煩悩も洗い流そうとする。


「男の部屋に来る意味わかってるのかよ……」


 鏡花のことだ、絶対わかってない。
 つーか本当に来るなんて思ってなかったし……。


「お嬢、お待たせしました」

「おかえ……っ!?」

「なんですか?」

「ふ、服着てよ!!」


 真っ赤になって顔を逸らす鏡花を見て、まだTシャツを着てなかったことを思い出す。
 明らかに意識し出したのがかわいくて、意地悪したくなった。


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