幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


「那桜……っ!」

「ご安心ください。あなたに手荒な真似は致しません。あなたにも迎えが来ていますから」

「え……」


 窓の外を見て全てを理解した。
 門の前には車が停まっていた。その車から出てきて、こちらに向かって鋭い眼光を向けている人物は――


「パパっ!!」


 鏡花の父で桜花組組長・吉野和仁(かずひと)だった。
 まさか向こうにまで連絡していたとは。


「さあ、参りましょう」

「待って……っ、那桜……!」

「鏡花……!」


 泣きそうになりながら連れて行かれそうになる鏡花に、駆け寄ることもできないなんて。
 やっと手に入れたのに。やっと俺のものになったのに。


「――鏡花!!」

「っ、那桜……」

「俺は諦めないから」

「……っ!」


 絶対に諦めない。俺はこの恋の諦め方を知らない。


「絶対諦めないから」

「……うんっ!」


 泣きながら大きく頷き、鏡花は連れて行かれた。言葉通り大山は丁重に鏡花を扱い、吉野組長の元へ鏡花を引き渡した。


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