幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 バン!という強い音がして、ドアが閉められた。
 私はドアの前でしゃがみ込み、項垂れてしまう。

 正直甘かった……。
 もしかしてパパなら話し合えばわかってくれるんじゃないかって、期待してた。

 取りつく島もないなんて。
 スマホも取られちゃったし、どうしよう?


「なんでダメなの……?」


 そもそも桜花と染井はどうして対立するんだろう?
 一度は疑問に思ったけど、那桜に拒絶されたショックで私自身が蓋をしていたことだ。

 そんなに敵対する理由って何があるんだろう。
 それにパパ、那桜が好きだって言った途端に目の色を変えた。

 なんで?何がダメなの?
 好きな人と一緒にいたいと思うことはいけないことなの?


「っ、那桜……っ」


 今頃那桜はどうしてるかな?
 お父さんに殴られて、酷いことされてないかな?

 まだ体調が悪いのに、無理してないかな……。

 那桜に会いたい――。


「うっ、うっ……」


 ひとりぼっちになった部屋で、ただ泣くことしかできなかった。


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