幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 しばらくは涙が止まらなかったけど、涙を拭って自分の頬をパンっ!と叩く。

 こんなところでへこたれちゃダメだ。
 那桜は諦めないって言ってくれた。

 私だって、諦めたくない!

 とにかくもう一度パパと話をしよう!

 私が部屋を出ようとすると。


「お嬢、どうかされましたか?」


 部屋の前にいたのは桜花組の古株で幹部の一人、(みね)さんだった。


「峰さん!パパと話がしたいの!」

「すみませんがお嬢、組長からお嬢を出すなと言われています。何かあれば私が取り次ぎます」

「なんで!?」

「お嬢の頼みでも聞けません」

「そんな……」


 わざわざ幹部の峰さんを寄越すなんて、パパは本気ってこと?
 どうしてそこまで反対するの!?


「じゃあ、教えて。どうして染井とは敵対してるの?」

「……昔から、そういう関係なのです」

「本当にそれだけなの?」

「……」

「お願い!何か知ってるなら教えて!!」

「お嬢、お戻りください。組長に見つかったらまた怒られます」

「峰さん!!」


 峰さんは絶対にそこを退こうとはせず、頑なに首を縦に振らなかった。
 結局私は部屋に戻されてしまう。

 でも、雰囲気からして峰さんは何か知ってる。
 他の古株の組員たちも何か知ってるかもしれない。

 だけど、教えてくれそうにはないよね……。


――トントン。


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