幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
13.消えない後悔
――side.那桜
俺は仕置き部屋から抜け出し、外への脱出に成功していた。あの仕置き部屋には実は隠し通路があり、抜け出せるようになっている。
子どもの頃に家中を探検しまくっていたことがここで活きた。
母のあの様子では、一家の連中で俺の味方をする者はいないだろう。
自力でどうにかするしかないな……。
ちなみにスマホはある。
とりあえずとある二人の人物に連絡を入れた。
* * *
「那桜坊っちゃん!急な連絡でびっくりしましたよ」
「ふゆ、久しぶりだね」
ふゆは染井に昔から仕えていた家政婦だ。
今年で80を超え、とっくに隠居して今はのどかに老後の生活を送っている。
「少し見ない間に大人っぽくなられて。ご立派にお務めを果たされているようで、ばあやは嬉しゅうございます」
「ふゆ、どうしても聞きたいことがあって訪ねてきた」
「私に聞きたいことですか?」
「母が桜花組を憎む理由を教えて欲しいんだ」
今の俺が頼れるのは、ふゆしかいないと思った。
長年染井に仕え、幼少期から母をよく知るふゆなら、母の桜花に対する並々ならぬ憎悪の理由を知っているんじゃないかと思った。
ふゆは少し考えた後、肩をすくめた。
「私から話して良いのか悩むところではございますが、那桜坊っちゃんは知っていた方が良いのかもしれません。
美咲お嬢様が長年苦しんでおられる理由を」