幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
ふゆが落ち着くのを待ってから、尋ねた。
「そういえば、美桜さんの部屋はどこにあるの?子どもの頃、家中を探検しまくったことがあったけど、女の子の部屋らしきところはなかったけど」
「……ああそれは、今の那桜坊っちゃんのお部屋ですよ」
えっ、俺の!?
「しばらくは生前のまま残していましたが、那桜坊っちゃんが生まれてから遺品は別の場所に移して、部屋は坊っちゃんのものにしたのです」
灯台下暗しとはこのことだ。
しかもあの部屋、中学生になった辺りから色々自分好みにリフォームしてるんだけど、よかったのか?
「美桜お嬢様の記憶が残る部屋が、美咲お嬢様にはお辛かったのかもしれません」
「……遺品は全部移したのか?」
「そのはずですよ」
「亡くなる前日、美桜さんが落ち着かない様子だったと言ってたけど、具体的にはどんな風に?」
「そうですね、何かを隠しているように見えましたかねぇ……」
何かを隠した?
あの部屋が元々美桜さんの部屋だったなら、彼女が隠したものが俺の部屋にあるかもしれない。
でもだったら、リフォームした時に気づくんじゃないか?
いや、あそこは特に変えてないな。
もしかしたら――。
「ふゆ、ありがとう。用事を思い出したから帰るよ」
「那桜坊っちゃん?!」
「体に気をつけて」
そう言って自宅へ駆け戻る。