幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
パパはピタリと足を止めたけど、私の方を振り向くことはなかった。
そして低い声で言い放つ。
「……ああ、心底くだらんな」
「パパ……」
それがパパの本心?
かつてのパパと同じように、敵対する家同士で恋してしまった私のこと、本気でくだらないと思ってるの?
私はぎゅっと拳を握りしめる。
その時だ。
「――待ってくだせぇ!今はちょっと……!」
「あら、何か問題がございますの?」
急に廊下からバタバタという足音と聞き慣れた声がした。
「八重!?」
「鏡花、それに和仁おじ様!お久しぶりですわ」
ニコニコ笑顔で入ってきたのは、なんと八重だった。
「軽井沢でのお土産を持参致しましたの」
八重は夏休みに入って早々、軽井沢の別荘に行っていた。
八重の隣には背の高いスーツ姿の女性が控えていて、軽井沢のお土産らしきものを大量に持っている。多分八重の付き人だと思うけど、山積みすぎて顔がよく見えない。
「こちら、桜花組の皆様で召し上がってくださいね」
「あ、ありがとう」
「おじ様も是非」
「ああ、頂こう……」
「八重様、お久しぶりです」
「まあ!悠生さんですのね!お久しぶりです!」
「俺ももらっていいんすか?」
「もちろんですわ」
おいおいおーーい!?
何を呑気に土産もらってんのよ、悠生!!
食べ物につられるな!!