幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 今までの緊迫した空気何だったの!?ってくらい和んだ空気に変わった。

 いや、これはこれで空気が変わってよかったのかも。流石のパパも八重がいる前で声を荒げたりはしないだろうし。

 八重が買ってきたのは、フルーツケーキだった。これ、TVで紹介されてた秒で売り切れると噂の絶品スイーツじゃん。流石は八重。

 悠生のやつはもうケーキにしか目がいってないな……。仕方ない、紅茶でも用意するか。
 キッチンに行こうとしたら、前方不注意で誰かにぶつかってしまった。


「大丈夫ですか?」
「す、すみません」


 やばい、八重の付き人さんに思いっきりぶつかっちゃった……。
 顔を上げると、あまりにも美しい顔に驚いた。長い艶やかな黒髪にぱっちりとした瞳の超美人だ。

 あれ、てゆーかもしかして……


「怪我はありませんか?――お嬢」
「えっ、えっ」


 う、嘘でしょ……?


「那桜っ!?」


 思わず叫んでしまった。
 バサリと長い黒髪が外されたかと思うと、そこにいたのは紛れもない那桜だった。


「すみません、正攻法では会っていただけないと思い、八重に協力を仰ぎました」


 ま、マジか……!!


「騙すような真似をして申し訳ございません、おじ様。ですがどうか、お話を聞いていただけませんか?」


 八重も深々と頭を下げた。


「無礼を承知であなたにお話があって来ました――吉野組長」

「……つまみ出せ」


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