幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
「……それがあなたの本心なんですね」
え……?
私はパパと那桜を交互に見つめる。
「あなたが一番恐れているのは、美桜さんのように鏡花を失うことなのではないですか?」
パパ……。
パパはこれまでにない程、苦しそうに震えながら拳を握りしめる。
「……っ、私なんかと出会わなければ、美桜は死なずに済んだ。私が話せばわかってもらえると甘く見ていたせいだ。
あまりにも愚かだった」
「パパ……」
「私の子どもじみた抵抗力が、美桜の人生を奪った。その後悔は未だに消えない。
なのに娘が同じ道を辿ろうとしている!かつての私とように、鏡花を不幸にしようとする男がいる!それを止めて何が悪い!?」
パパは今もずっと美桜さんを失ったことから、本当の意味で立ち直れていないんだ。
パパが苦しむ気持ちも、私のことを本気で心配してくれる気持ちも痛い程伝わってる。
でも――、
「美桜さんは不幸なんかじゃなかったと思うよ。
学生時代の写真見せてもらったけど、パパの隣にいた美桜さん、すごく幸せそうだった」
大好きな人と一緒にいられて、嬉しくて幸せで仕方ないというような――そんな笑顔だった。
「鏡花の言う通りです。美桜さんはあなたと出会って恋したこと、少しも後悔していませんでした」
「貴様に何がわかる?」
「美桜さんの日記を読ませていただいたんです。勝手に読むのは申し訳ないと思いましたが、『これを見つけた人に読んで欲しい』と書かれていたので、読ませていただきました」