幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
那桜が見せたのは、「染井美桜」と書かれた桜模様のかわいらしいノートだった。
「ここにはあなたと出会ってからの日々が綴られていました。家のことで思い悩むこともあったけど、あなたと出会って恋したことは間違いではない。
秘密がバレて糾弾され、引き裂かれそうになっても美桜さんはあなたと共に生きていく決意をしていました。心から愛していたから」
「……っ」
パパは苦しそうに項垂れていた。唇が震えている。
「亡くなる前日、美桜さんはこう綴っていました」
いつか染井と桜花が対立することなく、一緒に笑い合って助け合える日がきてほしい。
志は同じなのだから、きっとわかり合える日がくるはず。
「そしていつの日か、私たちの恋が間違いではなかったと証明したいと。そう綴られていました」
「……美桜、」
私はパパに駆け寄り、ぎゅうっと抱きついた。
「パパ、パパは今、幸せじゃないの?」
「そ、れは」
「美桜さんは不幸な事故に遭ってしまったけど、美桜さんの人生そのものが不幸だったなんて否定しないで。美桜さんは間違いなく幸せだったんだよ……!」
美桜さんには会ったことがないけど、でも何となくわかる気がするの。
だって私も同じ気持ちだから。
「正直ね、なんで那桜なの?って思う気持ちはあるよ。いつも涼しい顔してムカつくし、デリカシーないし、腹黒いし顔は全然タイプじゃないし」
「お嬢??」
「一回くらい負かせてギャフンと言わしたいよ。でも、そうやって那桜と張り合ってる自分が意外と嫌いじゃないことに気づいたの。
那桜と一緒にいる時が一番私らしくて、すごく幸せなことなんだ」