幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 悠生は目をこする私の腕を取り、真剣な表情で見つめた。


「あんな奴のことなんか忘れてください」

「悠生……」

「泣いてるお嬢なんか見たくねぇんだよ……!」


 悠生の心配と複雑さの入り混じった表情が、私の心をズキリと痛めた。

 悠生にこんな表情させるなんて、私って最低だな。これ以上悠生に心配かけたくない。
 でも、


「それでも私は、那桜のことが好き」


 忘れるなんてできない。
 諦めることもできない。


「私には那桜しかいないんだ」


 悔しいけど、那桜以上に好きになれる人なんて多分この先現れない。
 那桜じゃなきゃダメなんだ。


「……そうっすか」

「ごめんね、悠生。心配かけて」

「お嬢がそう言うならいいっすけど、あいつに会った時一発殴るのは止めないで欲しいっす」

「ふふ、わかった」


 どんな時でも私に味方してくれる悠生には感謝しかない。

 とにかく、泣いてたり暗い顔ばっかりしてちゃダメだ。明るさと元気が私の取り柄なんだから。
 もっと前を向かなくちゃ。

 その時電話が鳴った。八重からだった。


「もしもし?」

『鏡花!ネットニュース見ました!?』

「ネットニュース?」


 言われてチラッと悠生を見やると、悠生はすぐにスマホで検索する。


「えっ……」

「何?何があったの?」


 横からひょいっと悠生のスマホの画面を覗き込む。


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