幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 ああ、ついに発表されるんだ。
 どの子になるんだろう。どうやって選んだんだろう。

 何かが目から込み上げてくるのを必死に押さえようとしていた、その時だった。
 急に私の周りにパッとライトが照らされる。


「えっ」

「僕の婚約者、吉野鏡花さんです」


 ――えっ????

 えぇーーーー!?!?

 何が起きてるのかわからず、パニックになっている私に向かって那桜が真っ直ぐ歩いてくる。
 私の手を優しく取ると、そのままエスコートしてステージに上がった。
 そして那桜がグイッと私の肩を抱き寄せる。


「改めてご紹介します。婚約者の吉野鏡花さんです」


 いやいやちょっと待って!?
 何が起きてるの!?!?

 ステージからポカーンとしている八重と悠生の顔も見えた。あの様子だと、二人とも本当に知らなかったようだ。


「ふざけるなぁ!!そいつは桜花組の娘じゃないかっ!!」


 そう叫んだのは着物を着た白髪の老人だった。
 多分だけど、染井一家の関係者だとは思う。


「染井を裏切るつもりなのか!?」


 その怒号を皮切りに、会場はどよめきざわつき始める。当たり前だけど、ここには染井一家の組員や別支部、傘下の組員たちも多く参加してるんだ。
 こんなところで騒ぎになったら……!!


「――那桜っ!!何を考えているのっ!?」


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