幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
金切り声をあげたのは那桜の母・美咲さんだった。
「あなた、話が違うじゃない!!ちゃんと染井の将来を見据え、相応しい相手と結婚するというのは嘘だったの!?」
「嘘なんて言いません。自分の将来を見つめ直し、やっぱりこの先隣にいるのは彼女しかいないと思ったんです」
那桜――……。
「ふざけるのもいい加減にしなさい!!どうしてわからないの!?
その女といてもあなたは自分の身を滅ぼすだけなのよ。親の言うことには従いなさい!」
「嫌です」
「那桜!!どうしてわかってくれないの!?私はあなたのことを思って……っ」
「違います。母さんは俺と美桜さんを重ねてるだけです」
「っ!」
その言葉に美咲さんは言葉を詰まらせた。
「美桜さんを亡くして辛いのはわかります。美桜さんと同じように吉野の娘と恋に落ちた俺を、認められないのもわかります。
でも、俺はそれでも鏡花と一緒にいたい」
那桜の言葉に押し込もうとしていた涙がこぼれ落ちた。
「確かに染井と桜花は長年因縁関係にありました。古くに何があったかは知らないけど、これまで大人に教えられてきたことを鵜呑みにしてきた。
でも、いい加減変わるべきなのではないですか?」
これには美咲さんだけでなく、染井の組員や傘下たちもグッと言葉を詰まらせていた。
「俺は2週間だけ桜花に身を置き、桜花の組員たちが地域の人々を守るため一生懸命働く姿を見ました。皆が笑顔で家族のようで、とても温かかった」