幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


* * *


「あなたたちって本当に……成長しませんのねぇ」

「「…………」」

「どうして結婚式でも喧嘩していますの!?」

「だって!」


 心底呆れ返ってる八重に向かって弁解する。


「那桜が深山さんに告られたこと黙ってたんだもん!」

「卒業式の時に最後だからと言われただけですよ。わざわざ言う程のことでもないと思っただけです」

「でも黙ってられるとなんかやだ!」

「鏡花こそ婚約したとわかった途端、何故かウジ虫のように湧き出して……俺が今までどれだけ排除してきたと思ってるんですか」

「ウジ虫って何!?」

「この鈍感」

「何がよ!!」

「ああもう、嫌ですわぁ」


 げんなりしたように、はぁーーーーと深い溜息を吐く八重。
 この日のために仕立てたであろう、淡いピンク色の古典柄の振袖が台無しになりかけている。
 いや八重だから、完璧に着こなしているけど。


「どうして晴れの日にまでこうなってしまうのでしょうか」

「……」

「痴話喧嘩はそこまでになさいませ。せっかくの晴れ着ですのに」


 そう言って八重は鞄からあるものを取り出した。
 桜の花の見事な髪飾りだ。


「納得の出来映えになるまで時間をかけていたら、当日になってしまいました」
「わあ!すごい!めっちゃかわいい!」
「鏡花、お掛けになって」


< 165 / 176 >

この作品をシェア

pagetop