幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
「ありがとう、ママ」
「那桜くんもカッコいいわ!俳優さんかと思ったわよ〜」
「ありがとうございます」
那桜は染井の家紋が入った黒五つ紋付きを着ている。代々跡取りが結婚する際に着る紋付きらしい。
本当に那桜が着ると俳優並に整いすぎてて、ちょっと腹立たしくも誇らしくもある。
「さっきね、那桜くんのご両親にご挨拶してきたの。お母様もいらしてたわよ」
「そうですか。母は何と?」
「特に何も仰ってなかったけど、嬉しそうにされてたわ。そう見えたの」
那桜のお母さんとはまだ少しギクシャクしているところもあるけど、少しずつ話をさせてもらっている。
両家の顔合わせにも参加してくれたし、こうして結婚式にも来てくれた。
「そっか……お義母さんにも祝福してもらえてるといいな」
「きっと祝福してくださってるわ」
「……ジェシカ、そろそろ行くぞ」
「和仁さんからも何か言ってあげて?」
「……似合ってる」
「ありがとう、パパ」
ぶっきらぼうで不器用だけど、パパの言葉が嬉しい。「照れてるのよ」とママは囁いていたけど、ちゃんとわかってるよ。
それから両親が戻って行き、式場のスタッフさんが私たちを呼びに来る。
いよいよだ、とお互い頷き合って控室を出た。