幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 急にグイッと腕を掴まれ、びっくりして顔を上げる。そこには何故かものすごく不機嫌そうな表情の那桜がいた。


「ちょっと、何?」

「……」


 那桜は真顔かつ無言で私の鼻をつまむ。


「ぶふっ!」

「マヌケヅラでノロノロ歩いてるからですよ」

「はあっ!?」


 いきなり何なの!?
 やっぱりこいつ、私のことナメ腐ってるんだ……!!

 マジでムカつく!!


「……この鈍感」

「なんか言った!?」

「――こっちの気にもなれっつうんだよ」

「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!!」

「お嬢のバーカ、マヌケ、万年2位」

「よーし!!今すぐぶっ飛ばす!!」


 拳を握りしめ、ブンブンと肩を振り回す。
 心なしか、周囲の人たちが八重とは別の意味でサーっと道を空けている気がするけど、そんなことはどうでもいい。

 どこまでも私のことバカにして!!
 何なのよ……っ!!

 昔はあんなじゃなかった。
 まだ家のこととかよくわかってなかった幼い頃は、八重も含めて三人で仲良く遊んでた。

 それなのに――……


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