幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 幼稚園児の頃の那桜はかわいかった。
「きょーかちゃん」って私の後をついてくるかわいい子犬みたいで。
 私も那桜と遊ぶのは楽しかった。

 変わったのは小学生になったばかりの頃だ。

 私は父から「那桜とは遊ぶな、関わるな」と言われた。理解できないし納得できなくて、「嫌だ」って言った。


「お前は桜花組の娘なんだぞ!染井一家の息子となんか関わるな!」


 怒鳴られた私は泣きながら家を飛び出した。

 なんで?何がダメなの?
 私はただ那桜と一緒にいたいだけなのに。

 きっと那桜もそう思ってくれているはずだって。そう思っていた。


「……もう、きょーかちゃんとはあそばない」

「な、なんで……?なおちゃんときょうかは、ともだちでしょ!?」

「ともだちなんかじゃない」

「……っ!」

「ともだちになりたいとおもったことなんて、いちどもないよ」


 その言葉がショックすぎて、頭から布団を被って一晩中泣いた。
 仲良しだって、友達だって思っていたのは私だけだった。ものすごく傷ついた。

 それから私も意識を変えた。
 那桜はライバルで敵なんだって。
 那桜にだけは絶対負けたくないって。

 私は本気で勝ちたいと思っているのに、あんな風にバカにするなんて――


「絶対許さないんだから!!那桜のアホーー!!」


< 18 / 176 >

この作品をシェア

pagetop