幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
3.奪われたファーストキス
あれから、那桜のことは避けている。
同じクラスだから顔を合わせないってことは無理だけど、話はしていない。
「お嬢……、」
「八重〜!今日八重ん家行ってもいいー?」
あからさまに避けている。
「構いませんけれど、何かありましたの?」
「いや実は、うちの連中みんなお腹壊しちゃってさ。お詫びに何かお腹に優しいものでも作りたいから、八重教えてよ」
「……例のクッキーですわね?」
「あははははは」
那桜に食べさせるはずの下剤クッキーは、渡すことなく家に持ち帰った。握りしめすぎて粉々に割れちゃったんだけど、「お嬢が作ったものなら!」ってみんな食べちゃって。
止める間もなく、今我が家のトイレはずっと大渋滞になっている。
「だから言いましたのに」
「反省してるからさ〜。お願い、八重!」
「仕方ありませんわね」
幼少期から数々の習い事をしていた八重は、料理の腕前もプロ級。少しでもお腹に優しくて美味しいもの食べてもらって、元気になってもらおう。
「……。」
そして、さりげなく那桜から遠ざかる。
那桜は何か言いたそうな顔をしている気がしたけど、気づかないフリをした。
「……鏡花、よろしいんですの?」
「何が?」
「那桜さん、何か話したそうでしたよ」
「知らない」