幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


「別に避けてない……」

「じゃあなんで俺の目を見ないんです?」

「…………」


 こんなあからさまな嘘、那桜に通用しないのはわかってる。


「お嬢、こっち見てください」

「やだ」

「俺からのプロポーズ、迷惑でしたか?」

「……迷惑だよ」


 あんな嘘つきのプロポーズなんて。
 私のことなんて何とも思ってないくせに。

 本当は好きな人がいるくせに。


「軽々しく結婚とか言うな……っ!」


 絶対に泣くもんかと歯を食いしばった。
 泣きたくなるくらい悔しいことに、自分でも驚いてる。

 そして何より悲しい。
 那桜に何とも思われてないことに――……



「――俺がいつ軽々しく言ったんですか?」


 急に那桜の声のトーンが低くなった。


「勝手に軽々しいとか決めつけないでもらいたいですね」


 那桜、怒ってる……?
 いやいや、怒りたいのはこっちの方だ。


「じゃあどういうつもりで言ったの!?私たち敵同士なんだよ?」

「それが何ですか?家は関係ありません」

「関係なくない!私のこと何とも思ってないくせに!!」

「……何とも思ってない?」

「そうだよ!私のことなんかど……、」


 どうでもいいんでしょ?
 そう言おうとしたら、その言葉は塞がれた。

 自分でも何が起きたのかわからなかった。

 唇を塞がれていた。


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