幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 結婚には憧れがある。
 私の両親はお見合い結婚だったけど、すごく仲が良い。今でもたまに夫婦だけでデートしてるし、子どもながらにお似合いの二人だとずっと思っていた。

 私も結婚するなら、両親みたいな夫婦になりたい。大好きな人とずっと一緒にいたい。


「ちゃんと恋して結婚したいんだよ……」

「その相手が那桜さんではいけませんの?」

「〜〜っ、わかんないっ」


 私は再び顔半分まで浸かり、ブクブクと泡を吹く。

 だって考えたこともなかったから。
 桜花組と染井一家はずっと仲悪くて、商売仇で敵同士で。昔から染井とは関わるなって言われてきた。

 それこそ昔はなんで?って思ってたけど……、私たちはそういう宿命なんだって思ってた。

 那桜もそう思ってたんじゃなかったの?
 どうしてキスなんかしたの?


「もーーっ!わかんないよっ!!」


 ザパァ!とお湯から飛び出して、そのままこけそうになった。どこに控えていたのか、八重のメイドさんたちがすぐに駆け付けて支えてくれる。


「おわ、ありがとうございます……」
「逆上せられたようですね。八重お嬢様、鏡花様をお連れします」
「お願いしますわ」


 親友のお風呂で逆上せて運ばれるとか情けないな……。


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