幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 メイドさんたちは着替えの下着や浴衣、冷たい水も用意してくれて至れり尽くせり。キビキビとした動きで応対してくれるので、流石は満咲家のメイドといったところだ。

 うちのやつらはみんなガサツだからなぁ……。
 私が軽い風邪引いただけで大騒ぎだし、首にネギとか巻こうとしてくるし、下手な子守唄歌おうとしてくる。

 そんなやつらだけど、桜花組の組員たちはみんな家族だ。
 父は言った、桜花組は一つの大家族なんだって。
 ヤクザものなんて怖がられるし誤解されることもあるけど、みんな気の良いやつらばかりなんだ。


「……私、桜花組が大好きなんだ。
私にとっては大事な家だしみんな家族だし、何より大切なものなの」


 桜花と染井の因縁とかよくわからないけど、私は自分の大切なものを一番大事にしたい。
 それが素直な気持ちだった。


「そうですか」


 浴衣の寝間着に着替えた八重は、同い年とは思えない色気をまとっていた。メイドさんたちがせっせと八重の艶やかな黒髪を乾かして梳かしている。
 そういえば。


「八重ってメッシュ入れたままなんだね」
「ああ、これですか?」


 八重は黒髪の中にグレーのメッシュを入れている。いつからか忘れたけど、ずっと入れてるんだよね。


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