幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


「何となくこのままにしていましたわ」
「そっか。えへへ」
「何ですの、だらしなくニヤニヤして」
「メッシュ入れた時のこと、思い出してさ〜」


 いつから入れたかは忘れたけど、きっかけはよく覚えてる。

 私の瞳はグレーなのだけど、これはアメリカ人の血を引く母譲りだ。母はアメリカ人と日本人のハーフで、私はクォーター。

 髪も地毛がアッシュグレージュで、特に巻いてないけどくるんとした天然の癖毛が特徴。
 幼少期は周囲と違う容姿のことを色々言われたし、特に瞳は変な色だとバカにされた。濁っていて汚い色だって言われ、私はずっと自分の目がコンプレックスだった。

 そしたらある時、八重がグレーのメッシュを入れたのだ。


「とっても綺麗な色でしょう?」


 堂々とそう言った八重はとても眩しかった。そして、ものすごく嬉しかった。
 お家では八重姫がグレたと大騒ぎだったらしいけど。

 そういえば、昔誰かに瞳をすごく褒められたような気がしたけど、あれは誰だったっけ……?


「ところで鏡花、那桜さんのことは断るということですわね?」

「断るっていうか、そもそもあり得ないし……」

「お可哀想に……」

「え、なんか言った?」

「いいえ、鏡花がそうしたいならお好きになさると良いですわ」

「八重お嬢様、少しよろしいでしょうか」


 トントンとドアをノックする音がして、髪を乾かしていた人とは別のメイドさんが八重を訪ねてきた。



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