幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


「兄貴、やべえです!」


 慌てたように子分と思われる男が走ってくる。


「この女、吉野って桜花組の娘かもしれません!」


 あ、完全にバレた。


「桜花組ってあの二大勢力の一つの!?マジか」


 わかったらとっとと解放してよ。
 何者かは知らないけど、桜花組(うち)と争ってもメリットはないでしょう。
 多分今頃八重が連絡してくれてると思うし、私が拉致されたことは耳に入ってるはず。

 何とかこの場所を見つけ出してくれたらいいけど、私自身ここがどこなのかわからないからな……。

 何しろ目隠しをされて連れて来られたから。

 誘拐犯の子分の方はかなり焦っているけど、兄貴と呼ばれた方は冷静だった。


「ヤベェですよ!どうしますか!?」
「ヤクザの娘と警視総監の娘が一緒にいたってことは、お前はあの女に弱味を握られ、身代わりになるしかなかったってことか?」


 は…………?


「流石あの満咲だな。正義の味方ぶってるが、自分を守るためなら他人の犠牲を(いと)わない。
お淑やかに見えてとんだ悪女だな、満咲のお嬢様はよ」

「…………っ!!」


 ブチっと何かが切れた。
 勢いに任せて口元に当てられた布を食い破る。

 当然だけど、まさか食い破るとは思ってなかったのか、スーツの男たちはギョッとしていた。


「私は自らの意思でここにいるの!八重を悪く言うなら絶対に許さない」


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