幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 男の手が私に触れるあと数センチの時。

 ドカーーン!!
 急に耳をつんざくような爆音が轟く。

 驚いて私も男たちも、思わずビクッと身を震わせていた。

 倉庫の扉が思いっきり反り返った状態で、向かい側の壁まで激突した。
 破壊された扉から現れたのは、まさかの人物だった。


「那桜……!?」


 那桜が、どうしてここに――……!?

 扉は恐らく那桜が蹴破ったのだろう。
 ゆらりと倉庫の中に入ってきた那桜の表情に、私でさえゾクっとした。

 今から獲物を狩ろうとする獰猛な獣そのものだった。


「な、なんだテメェは……!!」


 男たちは突然現れた那桜に動揺を見せているが、ナイフを持っているからかまだ強気だ。

 那桜は一瞬私の方を一瞥(いちべつ)した。そして、次の瞬間――、


「……っ!?」


――ドスッ!

 目にも止まらぬ速さで黒スーツの男の腹に思いっきり蹴りを入れた。男はナイフを落とし、跪いて「ゲホッ、ゲホッ」と苦しそうに咳き込む。
 那桜はすぐさまナイフを蹴飛ばし、遠くにやった。


「お前、兄貴に何するんだ!!」


 今度は背後から子分が殴りかかろうとした。その拳を片手で受け止め、そのまま虫を払うかのように投げ飛ばす。


「ぐは……っ!」


 壁に激突し、そのまま子分は気を失った。
 え、死んでないよね……?


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