幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
「テメェ、何者だ……っ!」
腹を押さえたまま、男は苦しそうに這いずる。そいつに対し、容赦無くその手を踏み付ける那桜。
「ぐはあ……っ!」
「…………」
やばい、やばいなんてものじゃない。
那桜、ガチでキレてる。稀に見る本気の怒りだ。
男を見下ろす那桜の目は、ゴミを見ているようだった。
「……お前の素性はわかってる。振り込め詐欺で指名手配されてる詐欺グループのリーダーだろう?
アジトを突き止められそうになり、警視総監の娘を誘拐して取引しようとしたのか。浅はかだな」
「ぐほっ」
「他にも仲間がいるようだが、そいつらは全員警察に突き出した」
「くっそぉ……!!」
那桜は這いつくばっていた男の首根っこを掴み、恐ろしい程低くて冷たい声で睨み付ける。
「次俺の女に手ぇ出してみろ……生きて帰れないと思え」
「……っ!!ヒィィっ!」
まるで狼に睨まれた兎のように縮み上がり、ほんの少しだけ哀れに思った。
いやそんなことよりも。今那桜、「俺の女」って言った……?
「――鏡花!!」
次に見た那桜の表情は、獰猛なオーラは消えており、心底私のことを心配しているように見えた。
何故かわからないけど、すごくドキッとした。