幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
「なんでよ!?」
「お嬢俺に借りありますよね?」
「…………」
まあ、百歩譲って借りを作ったとしよう。借りはきっちり返すのが桜花組の信念だ。
色んな意味で。
でも、だったら何故デート??
「日曜日、11時駅前集合で」
「!?」
「お嬢なら来ますよね?約束を破るような不義理なこと、しませんもんね」
「ちょっと……!!」
「楽しみにしてますよ」
ニヤッと笑った顔に不覚にもドキッとしてしまったのは、絶対秘密だ。
少しでも那桜にときめいてしまった自分が悔しい。
つーかこいつ、なんでそんなに強引なんだ!?
何様のつもりなの!?そんな一方的に来いとか言われて、私が大人しく行くと思ってるのか!?!?
ナメるのもいい加減にしなさいよ――!!
「――というわけだから八重、一緒に来て」
「どうしてそうなりますの?」
その日の昼休み。中庭で八重が作った宝石箱のような見事なお弁当を食べながら、私は顔の目の前で両手を合わせていた。
「那桜と二人で、でえと……とか無理!」
「デートは互いに好意のある、またはどちらかが好意のある男女が二人で行くものですわ」
「違うよ!!」
「あら、今は多様性の時代でしたわね。男女というのは撤回しますわ」
「そこじゃねーよ」
私たちはデートに行くような間柄じゃないんだから……!