幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


* * *


 日曜日。人通り賑やかな駅前。


「お、おはよう」
「おはようございます」
「……」


 那桜は私と八重を見るなり、しばし固まったがすぐにニッコリと微笑みかけた。


「おはようございます、八重姫」


 主に八重に向かって。


「今日はご予定があると聞いていましたが」
「お昼頃までは空いておりますの。鏡花がどうしてもと泣きつくものですから」
「泣きついてないから!」
「わたくしもお邪魔してよろしいでしょうか」
「もちろん。八重姫なら大歓迎です」


 こいつ、八重の前ではいつもいい子ぶりやがって。


「……何となく予想はしていましたが。しかしこれから行く場所ですと、八重姫の素敵なお召し物を汚してしまうかもしれません」


 八重は普段から和服を私服にしており、今は和服と洋服を上手く織り交ぜたモダンなコーディネートをしている。最近は和洋折衷なコーデが人気なのだとか。


「大丈夫ですわ。見た目程高級なものではございませんし。意外とリーズナブルですのよ」


 こう言ってるけど、八重の言うリーズナブルは世間一般のリーズナブルとは違うからな。


「それより、今日の鏡花いかがですか?」
「!」
「かわいいでしょう?」


 今日の私は八重に全身コーデしてもらった。
 那桜だし、いつものラフで動きやすい格好で行こうとしたら八重に止められ、そのまま満咲邸に連れて行かれて着せ替え人形のように色々いじられた。


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