幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
着たことのない大きな花柄のワンピースに、履いたことのない高めのヒールのパンプス。デニムのジャケットを羽織ることで、甘さを抑えている。
アッシュグレージュの髪はコテで綺麗に巻いてもらい、編み込んでアレンジしてもらった。顔にはチークをはたかれ、キラキララメのリップグロスも引かれて。
私が私じゃないみたい。
「鏡花の素材はダイヤモンドクラスですから、一度存分にいじりたかったんですの」と何故か八重はノリノリだった。
確かに我ながらかわいいかも、って思ったけど……これを那桜に見せるのめちゃくちゃ恥ずかしい……!!
なんでかわからないけど!!
「かわいいですね」
!?!?
「流石は八重姫です。お転婆お嬢をこうまで変えるとは、やはり八重姫のセンスには敵いません」
……ああ、そういう意味ね。
そうだよ、私がかわいくなれたのは八重のおかげだ。別に私自身がかわいいんじゃなくて、八重が選んでくれた服と八重がやってくれたヘアメイクがかわいいだけ。
そんなのわかりきってたことだった。
「――もう、いいからとっとと行こうよっ。知り合いに見られたくないし」
なのに、胸がズキっとするのはなんでだろう。
もしかして私、ショック受けてる?
そんなまさかね……。
「そもそも今日どこに行くのよ?」
「ああ、それはですね……」