幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
まさか女子高生に止められるとは思っていなかったのか、リーゼントは腕を掴まれたままプルプル震えている。
「あとその大声もやめて。やたらと響いて雰囲気ぶち壊しだから」
「お前が貸し切り客か!?よくも日曜日に!!楽しみにしとった兄貴にどう落とし前つけるんじゃあ!?」
兄貴と呼ばれる恰幅の良い男は何も言わない。サングラスをかけているせいで何考えてるのかわからない。
でもよく見たら、その人が持っているものは全部ベリーズランドのグッズだった。
こんなに見た目は強面なのに、もしかしてガチファン?
年間来場数200回って相当だよね?
「…………。」
ガチファンの大男は黙って私を見下ろしていた。多分身長は180センチ以上ある。横幅もあるから、威圧感がすごい。
「兄貴ィ!」
私に掴まれて身動きの取れないリーゼントが情けなく助けを乞う。
大男が私に向かって一歩歩み寄った、その時だ。
「――彼女に手を出すな」
那桜が私の前に立ち、大男よりも鋭い威圧感で睨みつけた。例えるなら、敵を威嚇する狼のようだ。
那桜のオーラに思わず大男が一歩退いた。そして、持っている鞄の中に手を突っ込んだ。
それを見逃さず、那桜は即座に腕を掴み上げる。
「ううっ」
「何を出そうとした?」