幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 那桜は素早く大男が持っていたものを奪い取る。
 それは果たして――、


「……なんだこれは?」


 苺型の手持ちバルーンだった。スティックの先にナイロン製の小さなバルーンがついてる、ベリーズランドで売られているファンシーグッズだ。
 JKがこれ持ってインステに上げるのが流行ってるとか聞いたことあるやつだな……。


「それを、その子にプレゼントしようと……」

「は?」


 初めて喋った大男、一体何を言い出すの??


「め、迷惑をかけたお詫びにと」

「いやわかりづら!!」


 思わず叫んで突っ込んでしまったし、その拍子にリーゼントを掴んでいた手を離してしまった。
 いきなり離したせいでリーゼントは尻餅をついていた。


「夢と希望の詰まったベリーズランドで暴力は良くない。すまなかった」

「いやめっちゃいい人じゃん!!」

「楽しみにしていたのに貸し切りで入れなくて、ついカッとなってしまった。こいつを許してやって欲しい」

「兄貴……」


 人は見かけによらないとはこのことだ。
 ヤバいファンかと思ったけど、めちゃくちゃ常識的ないい人じゃん。


「年パス持ってるんですよね?この人たちも入れてあげてくれませんか?」


 私がスタッフさんに頼むと、那桜が驚いて私を見る。


「お嬢!いいんですか?」
「うん、私たちだけ独占するのはずるいよ」


< 59 / 176 >

この作品をシェア

pagetop