幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


「バカじゃないの?」

「お嬢に言われたくありません。自分が言ったことも忘れて結局人を入れてるし」

「だって、その方が楽しいじゃん」

「他の男からこんなものまでもらってるし」


 那桜は不服そうに私からバルーンを取り上げた。


「返してよ!」

「こんなの何に使うんです?」

「いいの!持ってるだけで楽しいの!」

「それこそバカみたいだと思いますけど」

「夢のないやつ!」


 別に使えるものじゃないけど、せっかくくれたものなんだし、こういうところでこそバカになった方が楽しいのに。
 それでもスポンサーなの?


「那桜って夢とかなさそう」

「失礼ですね……」

「なんかあるの?それこそ幼稚園の時なんて描いたわけ?」

「俺の夢は昔から変わってません」


 那桜は急に真顔になったかと思うと、私の左手を取って薬指あたりにキスをした。


「っ!?」

「今も昔もずっと鏡花が欲しい」


 あまりにも真剣な眼差しを向けられ、ボボボッ!と顔に火がつく。

 目の前ではポップでファンシーな音楽とともにキャラクターたちが楽しくダンスしている。みんなそれに夢中なのに、まるで私たちの周りだけ時が止まったみたいだった。

 那桜しか見えないし、那桜の声しか聞こえない。


< 62 / 176 >

この作品をシェア

pagetop