幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
「バカじゃないの?」
「お嬢に言われたくありません。自分が言ったことも忘れて結局人を入れてるし」
「だって、その方が楽しいじゃん」
「他の男からこんなものまでもらってるし」
那桜は不服そうに私からバルーンを取り上げた。
「返してよ!」
「こんなの何に使うんです?」
「いいの!持ってるだけで楽しいの!」
「それこそバカみたいだと思いますけど」
「夢のないやつ!」
別に使えるものじゃないけど、せっかくくれたものなんだし、こういうところでこそバカになった方が楽しいのに。
それでもスポンサーなの?
「那桜って夢とかなさそう」
「失礼ですね……」
「なんかあるの?それこそ幼稚園の時なんて描いたわけ?」
「俺の夢は昔から変わってません」
那桜は急に真顔になったかと思うと、私の左手を取って薬指あたりにキスをした。
「っ!?」
「今も昔もずっと鏡花が欲しい」
あまりにも真剣な眼差しを向けられ、ボボボッ!と顔に火がつく。
目の前ではポップでファンシーな音楽とともにキャラクターたちが楽しくダンスしている。みんなそれに夢中なのに、まるで私たちの周りだけ時が止まったみたいだった。
那桜しか見えないし、那桜の声しか聞こえない。