幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


* * *


 それからどうしたのかあまり覚えてない。
 いつの間にかパークを出ていて電車を乗り継ぎ、帰路を歩いていた。
 その間も手はずっと握られたまま。

 誰かに見られたら、って思うのに手が離せない。むしろもう少しこのままがいいって思ってる自分がいる。

 私ったらどうしちゃったの!?


「――鏡花」

「ふぁいっ!?」

「ふっ、なんですかその声」


 いきなり名前呼ぶからじゃん!
 つーか笑顔かわいい。何それかわいいずるい。


「鏡花も俺が好きってことでOKですか?」

「はっ!?」

「好きですよね?」


 そ、それは……っ。


「し、知らないっ!」


 思いっきりぷいっと顔を背けてしまった。
 するとすぐに頬をむにっとされて、ぐいっと顔を向けさせられる。そのせいで口はあひる口に。


「あなたって人は本当に素直じゃないですね……」

「むうっ」

「またその口塞ぎますよ」

「っ!」


 ――その時だった。


「!」


 那桜の真後ろから獣のような殺気を感じた。
 次の瞬間、金色の獅子が那桜に向かって激しい回し蹴りを入れてきた。突然の襲撃にも那桜は動じず、片手一本で受け止める。


「お嬢から離れろ」


 金色の獅子はケダモノのオーラを放ち、低い声で那桜を睨みつける。いや、獅子ではなく金髪の少年だった。
 私は驚いて彼の名を叫んでいた。


「ゆ、悠生(ゆうせい)!?」


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