幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 急な謝罪にチームメイトたちはみんな驚いていた。


「大丈夫だよ!むしろ鏡花ちゃんに任せちゃってごめんね」
「鏡花のおかげで勝てたよ!」
「みんな……」


 うう、みんな優しいなぁ……。

 那桜にばかり気を取られてちゃダメだった。
 次こそはみんなで楽しむことも考えないと!

 男子のゲームが終わった。那桜たちのチームが勝利だった。


「那桜くんカッコよかったね〜!!」
「アタック決めるしサポートも完璧だし!那桜くんってほんとに素敵!」


 ポイントを決めた数なら負けてないと思うけど、なんだかすごく負けた気分。
 これで勝っても嬉しくない。

 なんでなの!!
 いつになったら私は那桜に勝てるの!?

 ヤキモキしながら体育の授業を終えて教室に戻る。制服に着替え、はあと溜息をついていると。


「勝てない勝負は潔く身を引くのが賢い戦い方ですわ」

「っ!」

「まあ鏡花の場合は、一度も勝てたことがありませんけれど……」

八重(やえ)!」


 まるで日本人形のように整った艶やかな黒髪には、和風な雰囲気には似合わずグレーのメッシュが入っている。
 しかしそれさえも違和感を与えないのは、彼女の持つ独特で優雅な立居振舞いのおかげだろう。

 お淑やかさと上品さを醸し出す可憐な容姿と口調とは裏腹に、辛辣な言葉を浴びせてくるのは満咲(みつさき)八重(やえ)
 幼稚園から一緒のもう一人の幼馴染。

 八重は警視総監の父と華道家の母を持つお嬢様。他にも日本舞踊や茶道も嗜む生粋の大和撫子。
 世が世ならお姫様だったであろう彼女についたあだ名は「八重姫」。

 だけど、意外と毒舌な一面があったりする。


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