幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 マジで目の前の悠生が救世主に思えた。


「今日は音楽あるのにリコーダーがお嬢の机にあったんで」
「よくわかったね!?」
「稽古場にお嬢の時間割拡大して貼ってあるっすから」


 なんでそんなもの貼ってるんだ。
 まあいいか、おかげで助かった。


「にしてもお嬢、ド音痴のくせになんで音楽取ったんすか?」
「うるさいな!!書道と美術よりマシだったからだよ!!」
「あー、何故か墨とか絵の具とかぶちまけてたっすね」
「誰が災害レベルの不器用だ!!」
「そこまで言ってねぇ」


 なんて喋ってる間に授業が始まる!!


「じゃあね!ありがとう悠生!」
「頑張れお嬢」


 急いで音楽室まで走って行こうとしたら――、


「!?」


 渡り廊下の途中で誰かに背後からグイッと掴まれた。その反動で思いっきり後ろから倒れ込んだけど、何故かどこも痛くない。


「な、那桜!?」


 那桜に後ろからがっちりホールドされたまま、座り込んでいる状態。一応茂みの中に隠れてはいるけど、誰かに見つかったら……!!


「な……んっ」


 グイッと頬をつままれたかと思ったら、唇を唇で塞がれる。


「んんっ」


 顔を背けようとしてもすごい力で離してくれない。逃がさないとばかりに唇を食べられたり、なぞるように舐められたり。

 那桜のキスは麻薬みたい。ダメって思ってもふわふわしてとろけそうになって――全身がピリピリと甘く痺れるの。


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